日帝時代の「米収奪」について考える その6



鮮米の顕著なる移出減 (上・下)

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朝鮮米の内地移出は依然として減少傾向を回復しない。即ち本米年度十一月以降五月中旬までの移出高は四百八十六万六千石で前年同期の七百六十八万一千石に比し二百八十一万八千石即ち三割五分以上の激減を示している。

移出減少の原因
 移出米のこの激減は単に一時的乃至思惑的事情によるものに過ぎないか、或いは少くとも半ば恒久的性質を帯びたものであろうか。減少理由としては大体次の如きものが掲げられる

一、鮮米の本年度実収高は二千四百十三万八千八百七十四石にして前年に比し二百六十五万八千〇七十六石の減収なること
二、鮮内消費が増加傾向にあること
三、対満支輸出量の激増せること
四、鮮内相場が内地に比し割高なること



大阪時事新報 1939.6.6-1939.6.7(昭和14)


記事中には「鮮内消費の増大」の理由として

①人口の自然増加
②事変後最近における鉱工業、土木工事の殷盛による米購買力の増加
③農家の現金収入増加により換価の必要の減少


を挙げていて、さらに「粟の輸入が二十万石増加しているのに米の総消費量の減少となっていないことも興味深い」としています。「対満支輸出の増加」は、満州方面で増加する邦人向けです。それらが結果として朝鮮内での米市場価格を「内地の最高米価を無視した状態」となって日本向けの朝鮮米が減っていきます。

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ここまで当時の新聞等を中心に見てきました。簡単におさらいすると

■朝鮮半島の状況
・当時朝鮮半島では米以外の穀物(粟等)中心の食生活だった
・満州粟は、大正八年大兇作の際に当局が極力輸入を奨励した
・灌漑設備の整備、内地品種への転換、乾燥不足や土砂混入等の改善を行った
・朝鮮農家に産業としての農業(商品としての米)の意識が芽生えた
・朝鮮半島へは蓬莱米や外米、破米等が移入されていた
・日本人地主はピーク時(1935年)で水田面積の18.3%

■日本の状況
・当初朝鮮米は劣等米として扱われていた(赤米、乾燥不足、土砂混入等々)
・上記の改善に伴い朝鮮米の価格は内地米に近づいて行った
・大豊作の年では米価が暴落し朝鮮米に対する移出制限など問題となった

こうしてみると大きな疑問がわいてきます。それは

『何故朝鮮農民は米を増産しなければならなかったのか』

ということです。例えば朝鮮半島で米が増産されたのは間違いがないところですが、「日帝が内地の食糧事業を改善するため、朝鮮半島で米を増産し、それを日帝が奪う若しくは安く買って行ったので、安い満州粟を食べなくてはならなかった」のであれば「収奪のための増産」でなければならず、そこには「強制的に増産させた」ということでなければなりません。

だれがどうやって朝鮮農民に対し強制的に増産させたのでしょう、その根拠となる法律や施行令とはどういうものでしょう・・そういう説明がされた記述はありません。ですから、以前、『頑張れ 李栄薫教授』という記事で紹介した李栄薫教授が中心として書いたニューライト代替教科書では、



 コメ流通の歴史

 昭和12年(1937)  日中戦争

 昭和14年(1939)  米穀配給統制法
               ①米穀商を許可制に
               ②米穀取引所廃止(コメ先物取引全廃)

 昭和15年(1940)  臨時米穀配給統制規則および米穀管理規則
              ①産業組合系統による一元集荷により、米穀が自動的に政府へ
               集中するよう流通ルートを特定
              ②農家の飯米を除き全量を政府買入。必要に応じた配給の実施


 昭和16年(1941)  太平洋戦争開戦

 昭和17年(1942)  食糧管理法
              ①生産者に対しては、政府売渡義務を課す
              ②流通面では、集荷業者・卸・小売業者を、公平・効率的に
               「配給制度」を実施するための機関と位置づける


全国米穀販売事業共済協同組合HP


この時代「物資の配給」という制度が実施されますが、一方で「配給するためには供出」ということが必要ですが・・・





規制の肥大は公正を作りだすよりも、損なう事が多く、国民の公徳心を著しく損なうとともに、明日への、未来への健康な信頼を失わしめ、自分だけは、己の家族だけは何とかという利己心を増殖させるだけでなく、利己の裏面に潜む猜疑心を増殖させていく。

「自分だけが、損をしているのではないか、馬鹿を見ているのではないか・・・」

猜疑の下で、いよいよ道義は腐るとともに流言蜚語が蔓延する。

  ・予想高が少ないのは政府が軍需米として取るから故意に減収として発表した
  ・内地米は外貨獲得のためドイツに輸出され(中略)加工されているから米は足らぬ
  ・百姓は統制強化で馬鹿らしいといって田畑を売歩いている
  ・米価の吊上策として労力不足を口実に供出米の出荷を渋っている地方がある

(「経済統制に関する流言浮説」、『思想特報』昭和十六年一月十五日、司法省刑事局より抜粋)


「現代ビジネス」松下幸之助 vol.6 より抜粋



小暮泰用「復命書」というのを知っていますか?


次のような文が書かれているので強制連行(徴用)のことでよく知られてい資料です。

徴用は別として其の他如何なる方式に依るも出動は全く拉致同様な状態である。其れは若し事前に於て之を知らせば皆逃亡するからである、そこで夜襲、誘出、其の他各種の方策を講じて人質的略奪拉致の事例が多くなるのである。

何故に事前に知らせれば彼等は逃亡するか、要するにそこには彼等を精神的に惹付ける何物もなかったことから生ずるものと思はれる、内鮮を通じて労務管理の拙悪極まることは往々にして彼等の身心を破壊することのみならず残留家族の生活困難乃至破壊が屡々あったからである


しかしこの後に続く文章は・・
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殊に西北朝鮮地方の労務管理は全く御話にならない程残酷である。故に彼らは寧ろ軍関係の事業に徴用されるのを希望するほどである。かくて朝鮮内の労務規制は豫期の成績を挙げていない。如何にして円満に出動させるか、如何にして逃亡を防止するかが朝鮮内における労務規制の焦点となっている現状である

となっています。実はこの項は『朝鮮内における労務規則の状況並びに学校報国隊活動状況如何』という項に書かれている内容で、日本へ連行するときのことが書かれているわけではありません。ここで書かれていることは「農家などで働き手の男性が徴用されると後が困るから実情に合わせて指名徴用制にした方が良いという内容です。

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どうしてこの報告書を紹介したかと言うと、この報告書の『都市及び農村における食糧事情』という項に

供出監督者は農家や農家の周囲を捜索し炊事時に不意的に踏む込み炊事釜や検査し、果ては面・駐在所等に呼び出して尋問する等全く朝鮮でなくては見ることの出来ない奇異なる現象を彼所此所に露出している

と書かれていて、このことが「米の収奪」の際に良く見られる文章だからです。「日帝は官憲などをも利用して収奪した」とか、何故供出問題に関して駐在所(警察)が関与しているのでしょう。次回はその辺りを考えてみます。










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