日帝時代の「米収奪」について考える その7



昭和十七米穀年度食糧対策成る

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一、本府統制米穀各道割当につき各道はその四分三程度を道内の大、中生産者に割当、法規に基づき之を保管せしめ票箋を附することとしこれ等の買付は後廻しとして小農の生産米穀を時期を失せぬよう買付機関を動員して行わしめること 

一、浮動米穀と雖も売却希望のものには必要に応じて統制米に準じて買付を行うが、今回の米価引上によって高価に販売して低廉な公定価格で購入するが如き不心得者の絶無を期するため売った者には爾後購入を認めないこととしたこと

一、小作米に対する奨励金の交付程度は頗る注目され、地主農場方面のみ潤って小農には奨励金の恩典に浴しない結果になることを防止するため共販場所の買付以外に指定買付人を定め、生産者の庭先買付を行わしめることとしたこと、而も買叩きを防ぐため之が買付価格を本府で指定する額としたこと

一、統制機関は朝鮮糧穀株式会社を中央機関とし、道に道糧穀株式会社を創立、両者の連繋を密にするため中央機関が地方機関に対し一定の出資を行う方針の下に準備を進め、中央会社は制令改正による米穀市場会社引直しまでは現在の市場会社を活用せしめ道知事の権限を生かしたこと


京城日報 1941.9.13(昭和16)


上記のことは日本でも同様に規定されています。

米穀生産者または地主に対する管理米数量の割当はその生産地または小作料として受くる米穀につき原則として当該生産者および地主についてはその小作人の居住地市町村農会においてこれをなすこと、ただし必要ある場合は関係農会協議のうえ適当なる農家においてとりまとめ処理するも差支えなきこと

管理米割当数量の計算は生産者に対しては実収高より算定したる自家用保有米の数量および小作人にありては更にその小作米の数量を控除したる残額、地主に対してはその地区内より収受すべき小作米の数量より自家用保有米の数量を控除したる残額とす

農民が供出米に対し奨励金などを取得せんがため自家用保有米分までも政府に売却しその後二重価格制を利用し安く買戻すがごときことは認めず


【大阪朝日新聞 1941.9.16(昭和16)】 『米穀国家管理実施要綱決る 全管理米を買上げ』

ここで前回の小暮泰用「復命書」の『都市及び農村における食糧事情』に書かれていることをもう一度見てみます。
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明日の糧まで、あるいは農牛、家屋、家財道具などを売り払って闇買いをして自己の割り当て供出量を完遂する

部落に於いて勢力のある者すなわち所謂有力者その他富豪権力者を覗いて出来(注:豊作?)以外の時の於ける農村の食糧事情は殆ど窮迫の状態にあった

朝鮮農村には増産意欲どころか寧ろ厭農思想が相当濃厚であり生産物を隠匿する傾向にあった


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そこで供出監督者は農家や農家の周囲を捜索し炊事時に不意的に踏む込み炊事釜や検査し、果ては面・駐在所等に呼び出して尋問する等全く朝鮮でなくては見ることの出来ない奇異なる現象を彼所此所に露出している

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朝鮮農村がこういう状況に対して都市部の食糧事情について小暮は「都市で殆どは完全に近い配給制度が行われている」と書いています。さらに都市部の財力があるものは自分の食生活を満たすため一方農民は自己の供出責任のために闇米を買っていると言うことを書いています。

小暮は復命書の中で

当時供出量は生産高から農家人口一人当りの消費量を差し引いて決められているが、朝鮮の場合過大見積りされた生産統計が基礎となり個々の農家の供出量が決められ、そしてこの供出令は至上命令となって供出の完遂は観照よりも強壓強権を加えて強いられる場合がきわめて多い

と書いています。

不思議なのは、都市部は「ほぼ完全な配給がされている」し「都市部でも農村部でも闇米が出回っている」のに農民だけ米がない・・というのは何故でしょう。農民から搾り取って配給分は計画的に出して残りが闇米に出回るのだとしたら闇米として売っているのは誰でしょう。出せるとしたら地主しかいないのですが・・・。

当時、朝鮮半島では供出に関してどういうことを行っていたかというと「愛国班」という隣組に近い組織が行いました。よく「皇民化政策」は「愛国班」をとおして行われたということが書かれています。

当時は 『綿布一尺、米一升』と言われていたそうですが、『棉作地帯を行く』 京城日報 1942.11.13-1942.11.23(昭和17)には、綿の供出に関する記事があります。記事中に

供出方法として、道(注:黄海道)が西鮮に魁け“愛国班”を昨年から真ッ先に取り挙げたのは偉功だった

従って供出に関して愛国班が利用されたのは昭和16年のことです。さらに

棉によるこの供出運動が徹底した暁はこの運動はやがて小麦その他の供出物資に対しそのまま転用出来るし、愛国班は農民運動の基礎網として強固な活動力を把握するだろう。欲をいえばこの活動力にいっそうの枢軸を与えるためこの際棉花に米、麦などと同様重要物資としての供出府令を仰ぎたいものだ、このことはただに棉花の供出活動を健康にするのみでなく、農民運動として折角定着しつつある“愛国班”の活動をいっそう自主健康にする作用をさえもつのである

とありますから米も含めて農村部の穀物の供出に関して愛国班が中心になっていたと考えられます。供出率が全鮮の第一位だった黄海道の例で供出に関してみてみます。

農会職員十二名を擁し、春四月先ず郡内愛国班長約二千名を集めて、“棉作大会”を開き、その年の計画、方針、共販方法などを示し割当面積の確保を強調する

大会から帰った班長は班員を集め郡の示表を中心に班の責任面積の割当を全く自主的にやる、そして各自の報告書を郡に出す郡は報告書に依って直ちに指導員を出し土地選定を行う

この時から供出量に対する大まかな指定が行われる、土地選定が終ると播種に移り郡の棉作基本台帳が出来上る、八月上旬になると耕作組合を中心に全班員を集め摘心除草、除虫などの肥培管理の講習会を一週間開く、開花期が来ると郡職員、班長、耕作者が総出で収量調査を行う、この調査が供出の目標量を決定する訳だ

斯うしていよいよ供出期が来ると毎夜々々台帳を手に指導員は班長を、班長は班員を督励し廻って綿は共販市場へと運ばれるのだ

供出督励の方法としては道で書いた外に郡として優良班に賞品金を出したり、供出が終っていなくても結構棉の使用を五十斤まで許可する、その代り班員がお互に棉花を出し合って班としての責任量だけは供出する訳だ


ただし全ての道で愛国班としての共同出荷というのは行われてはいなかったようで、忠南道の場合は愛国班単位に督励しているけれども出荷方法としては従来通りに農家各戸の自由出荷が多いと書いています。

また班単位での活動の他に表彰制度などにより供出を促すような方法を各道で取り入れています。例えば、忠南道では供出成績の優秀な郡や個人に表彰制を設け一等から三等までとして郡(団体)には優勝旗と賞金個人には賞金を授与している、その率は特等一千円一名 一等五百円二名 二等三百円三名 三等百円三名の割でした。また慶南道では農家の最も欲しているゴム靴布靴を供出成績の良い者に配給しているという記述がありました。


例えば共同出荷しなければならないのに隠している家があれば家探しと言うこともあったでしょうし、班として表彰されるために余分に出そうとすることもあったかもしれません。供出に関してこういう表彰制度があったことや奨励金目当てで自家用保有米分までも政府に売却して安い闇米または外米などを買っていたのか・・小暮復命だけではわからない部分もあります。

一方で、綿に関しては密売や自家消費などがあって取り締まっていることなども記載されています。

■慶南統営郡
一部には供出督励に面職員が農家を訪問すると品質の良いものを自家消費に充てようとして舟に積んで沖合に漕ぎ出して匿そうとする不審者もいる
■慶南昌原郡
馬山府という消費地があって棉を欲しがる府民が農家から密買したり田舎から持ち込んだりする取締りである
■慶北金泉郡
原棉の密売や地木綿の製織は厳重に止められているのにも拘らず、この郡が棉作の少い忠北に境している関係上夜間ひそかに農家へ買い出しに来る者があったり、鉱山のあるところでは農家で作った地木棉を法外な値段で買う傾向があるのでこの取締りに郡当局が躍起となっている
■慶南密陽郡
棉作を古くからやっている関係上加工技術が進歩し、いかに厳重な監視をしても地木棉を作る者が絶えず、また他郷へ出稼に出ている者へ提供する道外搬出の傾向が特に目立つので各駅に見張人をつけたり邑の指導員が自己に課せられた供出責任数量を達成するように、今や郡庁職員は督励の明け暮れを送っている
■全南光山郡
この郡は光州府を擁している関係上一般繊維製品の不足に伴って棉花の密売、地木綿の需要者が多くその値段が高価なので一時共販出廻りは非常に悪く自家消費が増大するので郡当局を初め各面指導員が躍起となりこれを根絶するよう必死の督励に努めた結果、果してその甲斐があって出荷状況は可成りよくなっている、しかし目標数量達成はやや困難視されているようだ

内地の場合は「ヤミ」と言えば、都会の人が配給だけでは足りないので農家に買い出しに行くことで、それを取り締まるということで、小暮復命書に書いているように朝鮮半島と内地では全く逆の状況になっているのですが、こういうことが杜撰な生産計画と言うだけで説明がつくのかどうかよくわかりません。

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